鬼太郎前夜ともいえる、怪異短編集「ゲゲゲの素」水木しげる

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ゲゲゲの素、というタイトルが意味すること。それはなんでしょう。

鬼太郎は出てきません。鬼太郎に出てくる、悪い妖怪VS正義の妖怪というお話ではありません。これらの作品は2期の「ゲゲゲの鬼太郎」の原作となっているもので、テレビアニメとして、出てくるキャラクターに鬼太郎を加えたりしてアレンジをされたもの。だから、「ゲゲゲの素」。原作は人間の欲深さや進んだ文明に対する風刺といったもののエッセンスが凝縮されており、そう意味でも「素」なのかもしれません。

選出は、小説家の京極夏彦。11作品がバランスよく選ばれています。バランスというのは、描かれているテーマ。ゴーゴリの小説「ヴィイ」から取られた、古寺での魑魅魍魎と坊主の一夜の戦いを描いた「魍魎の巻 死人つき」から始まり、特にこれといった理由もなく、怪異に会い命を奪われる不合理な「妖怪自動車」、どこまでも膨れる人間の欲望を、卵から孵って育ち続ける化物をとおして表す「幸福という名の怪物」など。その他、物質文明への警鐘や古いしきたりを破る人間の傲慢さ、はたまた整形手術や、よく取り上げられる東南アジアでの怪異を取り上げたものなど、テーマがバラエティに富んでいて、満足できる一冊です。

表紙をめくったら、水木先生の優しい笑顔の写真と、その次の「あわてずにゆっくりやれ」という言葉が描かれているのもうれしい。

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